Sarch.co
穏やかな海の風景

代表メッセージ

CEO兼代表取締役 山下 翔大

—— まだ見ぬ明日を、誰かの仕様書の奥に埋もれさせないために ——

序章 このページを開いたあなたへ

はじめまして。合名会社 Sarch.co、CEO兼代表取締役の山下翔大です。

突然ですが、率直に申し上げます。この代表メッセージは、長い。意図的に長い。コーポレートサイトの代表メッセージとしては、明らかに長すぎる。SEO にも不利だろうし、離脱率の数字を見たくない。それでも、短くまとめる気にはなれなかった。なぜなら、私たちがやろうとしていることは、一行のキャッチコピーに還元できる類いの話ではないと、今も信じているからです。

あなたがここに辿り着いた理由は、私にはわかりません。採用情報を調べていたのかもしれない。Pocorom や Shiori の開発元がどんな会社か気になったのかもしれない。リンクを辿って、たまたま迷い込んだのかもしれない。いずれにせよ、あなたの時間は有限で、私の言葉にその一部を割いてくれたことには、まず感謝しなければならない。

これから先、あなたには長い文章が続きます。途中で閉じても構いません。ただ、もし最後まで読み通す気力があるなら——その先にだけ書いてある結論も、少しだけ違う形で届くはずです。

さて、本題に入りましょう。

第一章 当たり前の正体

世の中には、長いあいだ「当たり前」とされてきた仕組みがあります。

音楽はストリーミングで聴く。メモはクラウドに同期する。アプリは基本無料で、便利な機能はサブスクリプションだ。通知は常に来る。おすすめは常に更新される。データはどこかのサーバーに預け、自分の手元には、画面の断片だけが残る。

これらは、悪い話ではありません。むしろ、革命的なほど便利です。私も、その恩恵を毎日受けています。問題は、便利であることと、体験が深いことは別次元の話だという点にあります。

おすすめの矢印に従ってスクロールしているうちに、自分が何を聴きたかったのか忘れる。検索欄に入力する前に、すでに答えが提示される。知識は蓄積されるが、自分の言葉として結晶化する前に、次のタブが開かれる。——気づけば、体験の主導権は、ずいぶん前にどこかへ移動している。

私は、その移動に、ずっと違和感を持ってきました。違和感は、否定ではない。疑問です。「本当に、これで十分なのか」と問うこと。問いを止めないこと。それが、Sarch.co の出発点のひとつです。

社会には、常習化と形式化によって見落とされた領域がある。誰もが一度は感じたが、誰も製品の仕様として拾わなかった不都合。私たちは、その拾い上げる作業を、プロダクト開発という形で続けたい。それが、合名会社という小さな器の中でできることだと考えています。

第二章 2026年7月26日、午前四時

Sarch.co は、2026年7月26日 4:00 に設立されました。

時刻まで記載するのは、気まぐれではありません。その頃の空気を、できるだけ正確に残したかったからです。ビルドが通らない夜。コーヒーが冷めきったマグカップ。モニター越しに、エラーメッセージとにらみ合っていた時間。そこから、会社という名前を付けた。

資本金は12円。従業員数は1名。業務委託メンバーを含めても、表記上は1人です。数字だけ見れば、成立しない会社に見えるでしょう。けれど、会社の大きさと、プロダクトの深さは比例しない。むしろ、小さいほど、意思決定のレイテンシは短くなる。企画から実装までの距離が、物理的に近い。

合名会社という形を選んだ理由も、ここで触れておきます。大げさな治理構造より、意思の一致を優先したかった。名前の通り、合う名のもとに、合意した基準でものを作る。それ以上でも以下でもない。

私たちの事業内容は、個人向けサービスの企画・開発・検証・マーケティングです。toB の SaaS を売る会社ではない。DAU の桁を競う会社でもない。一人のユーザーが、自分の端末の中で、自分のデータとともに、深い体験を得る——その一点に、リソースを集中させます。

これは、市場規模の話を放棄しているわけではありません。個人という単位は、小さいように見えて、積み上がれば巨大です。ただ、最初から巨大を狙うより、深さを先に作る方が、私たちの手には合う。それが、率直な戦略です。

第三章 Pocorom —— 音楽との再会

最初に、Pocorom について話します。

Pocorom は、オフライン完結の個人専用 Android 音楽プレイヤーです。ストリーミングのおすすめではなく、あなたのライブラリの中に眠る一曲と、静かに向き合うためのアプリです。

なぜ、今さらローカルプレイヤーなのか。市場はすでに飽和している。それでも作る理由は、聴き方の主導権を取り戻したいからです。アルゴリズムが選んだ曲ではなく、自分が選び、自分が並べ、自分が繰り返す。再生履歴が広告の材料にならない。ネットワークが途切れても、音は止まらない。

技術的には、Kotlin と Jetpack Compose を基盤に、音響解析エンジン、オーロラのような UI、AI エージェントを統合しています。単なる再生ボタンとプレイリストではない。音の質感、視覚の揺らぎ、対話の可能性——音楽体験を、複数の層で再設計している。

開発の途中で、何度も迷いました。機能を足すべきか、削るべきか。おすすめを入れるべきか、入れないべきか。LFM Adder の基準に立ち返るたびに、答えは同じ側に倒れた。ローカルで、無料で、引き継げる。それ以外は、本当に必要かと問う。

Pocorom は、まだ完成していません。完成という言葉自体、私たちの辞書では動詞に近い。毎月、少しずつ形を変え、少しずつ深くなる。ユーザーに見せるべき状態と、自分が納得できる状態の間で、常に綱引きをしている。

それでも、一つの曲を、画面の光だけに頼らず、耳と記憶だけで聴く瞬間がある。その瞬間のために、開発は続く。

第四章 Shiori —— 知識の在り方

次に、Shiori です。

Shiori は、ステートレス・ファイルベースの個人知識管理アプリです。Markdown エディタ、ナレッジマップ、巡回 BOT、司書 AI を統合した、KMP(Kotlin Multiplatform)アプリです。

知識管理の市場には、すでに優れたプロダクトが存在します。私たちがあえて別の入口を作る理由は、データの所有権と、思考のリズムを守りたいからです。

ステートレスという言葉は、誤解を招きやすい。何も残らないという意味ではない。サーバー側に、あなたの思考の本体を預けないという意味だ。ファイルはあなたの端末にあり、フォルダ構造はあなたが決める。同期は手段であって、前提ではない。

ナレッジマップは、知識を階層だけでなく、関係として見せる。BOT は、眠っているメモを巡回し、思い出させる。司書 AI は、あなたのライブラリの文脈の中でだけ答える——インターネット全体のノイズではなく、あなたが集めた言葉の中で。

Shiori の設計で最も難しいのは、機能の多さと、静けさの両立です。PKM ツールは、機能が増えるほど、使う側の負担も増える。私たちは、足すたびに削る判断を繰り返している。ゼロから再構築するという言葉は、こういう場面で生きる。

知識は、貯めるものではなく、育てるものだと私は考えている。育てるには、土壌が自分の手の届く場所にある必要がある。Shiori は、その土壌を、ソフトウェアとして提供する試みです。

第五章 LFM Adder という契約

ここで、LFM Adder について、詳しく書きます。

LFM Adder は、Local · Free · Migration の略称です。Sarch.co がすべての自社プロダクトに適用する開発基準の名前です。理念ではあるが、装飾ではない。機能追加の可否、リリースの可否、採用の可否——あらゆる判断の前に置かれる、契約のようなものです。

Local。データの主たる保管先は、ユーザーの端末内であること。ネットワークは拡張であり、前提ではない。オフラインで核心体験が完結する設計を、可能な限り守る。

Free。基本機能を含め、ユーザーが金銭的コストを負担せずに利用できること。課金による体験の二極化を、意図的に作らない。収益化の話は、別の章でいつか書くかもしれないが、今は、この基準を先に固定する。

Migration。機種変更、再インストール、環境の変化——ユーザーがデバイスを変えても、データと設定を失わず移行できること。デジタルな所有が、一過性で終わらないこと。

これに加え、ダークモード、デザインの世界観統一、ユーザビリティ、ユニバーサルデザイン——七つの柱として、毎リリース照合している。

基準は、開発を遅くするように見える。ときどき、本当に遅くなる。けれど、基準がない開発は、もっと遅くなる。後から「なぜこれを入れた」と問い直す時間は、最初から問わない時間より長い。

LFM Adder は、ユーザーへの約束であり、開発者自身への規律です。

第六章 ゼロから、とは何か

私たちの Philosophy は、「今を深く見つめ、ゼロから再構築する」です。

ゼロから、という言葉は、既存コードをすべて消すという意味ではない。既存の「当たり前」を、一度ゼロ地点に戻して問い直すという意味だ。なぜ、この UI なのか。なぜ、この同期なのか。なぜ、無料ではないのか。

車輪の再発明を否定する言葉も、私たちは大切にしている。最短ステップで作る。ライブラリを使う。フレームワークに乗る。ゼロから再構築するとは、車を発明し直すことではない。道を選び直すことに近い。

再構築は、破壊として見えることがある。既存ユーザーの習慣を壊す恐れもある。だからこそ、Migration の基準が並ぶ。壊すのではなく、移す。捨てるのではなく、引き継ぐ。破壊的イノベーションという言葉を掲げながら、ユーザーの記憶は尊重する——この緊張関係を、製品の中で保ち続ける。

開発現場では、リファクタリングと再設計の境界が曖昧になる。数十万行のコードベースに触れるとき、その感覚はより鮮明だ。書き直すべきか、直すべきか。答えは、常に文脈依存だ。

それでも、問いを止めないことだけは、固定できる。止めた瞬間、プロダクトは保守モードに入る。保守は悪ではない。けれど、Sarch.co の今は、まだ問い続けるフェーズにある。

第七章 AI と、それでも人がやること

開発の話を、ここで少しだけします。

私たちは、Cursor などの AI ツールを、開発フローの前提として使っています。否定的な立場ではない。むしろ、なければ今の速度は出ない。

ただし、AI に任せる部分と、人が担う部分の線引きは、明確にしている。設計判断は人。体験の優先順位は人。倫理と約束の最終確認は人。実装の下書き、ボイラープレート、反復的な変換——そこは AI の得意領域に渡す。

月に一つ、プロダクトを完成させるというクレドは、AI があるからこそ挑戦できる側面もある。同時に、AI があるからこそ、品質の穴が加速する危険もある。だから、レビューは省略しない。ビルドが通ることと、出していいことは、一致しない。

エンジニア採用の文面で「1ヶ月で数十万行」と書いたのは、誇張ではない。ただし、行数は成果の指標ではない。読めるコードか。引き継げるコードか。LFM Adder に反していないか。——そちらの方が、はるかに重要だ。

AI は、相棒として使う。神として頼らない。敵として恐れない。距離感が、これからの開発スキルの一部になると、私は思っている。

もしあなたがエンジニアで、このページを読んでいるなら——ツールに使われる側ではなく、ツールと一緒に判断する側に立ってほしい。それが、私たちのチームで求める姿勢です。

第八章 毎月、ひとつ

クレドの二つ目。「毎月1つ、プロダクトを完成させる。」

完成の定義は、厳密にはブレる。新機能のリリースか、既存プロダクトの major 改善か、LP の全面刷新か。ただ、ゼロ進捗の月を続けない——これは、譲れない。

リズムは、品質とトレードオフの関係にある。速すぎれば、負債が溜まる。遅すぎれば、問いが冷める。月次という周期は、経験上、個人開発の体力と、チームへの共有粒度のバランスが取りやすい。

リリースは、終わりではない。始まりに近い。ユーザーの反応、クラッシュログ、自分の違和感——次の月の入力が、リリース後に集まる。だから、出すことへの恐れは、習慣で上書きするしかない。

Pocorom も Shiori も、コーポレートサイトも、採用ページも、エントリーシートも——すべて同じリズムの上にある。一つを遅らせると、全体がずれる。小さな会社ほど、同期の難しさを知る。

毎月ひとつ、という約束は、ユーザーへの約束でもある。止まっていない会社であること。生きているプロダクトであること。——規模の小ささを、停滞の言い訳にしない。

第九章 一人から、チームへ

現状、代表一人のソロ開発体制から、チームへの移行期にあります。

PdM、Android エンジニア、Web エンジニア——各ポジションで、業務委託を中心に仲間を迎え入れたい。正社員への道も、対話の中で描けると思っている。

少数精鋭という言葉は、きれいに聞こえるが、負荷の集中も意味する。ボトルネックが一人に集まる構造は、持続可能ではない。だから、拡張する。速さを失わない範囲で、分担する。

採用で大切にしているのは、スキルシートの長さだけではない。疑問を持てるか。約束を守れるか。おふざけと本気の境界を、自分なりに持てるか。——文化の適合は、技術と同じくらい、効く。

エントリーシートは、意図的に長くした。ガチな長さだ。志望動機と自己 PR に、最低限の文字数を設けた。面倒だと思ってほしい。面倒に向き合える人と、一緒に作りたい。

給与表記は、年収1,000円から1,200円としている。誤植に見えるだろう。半分は、そうかもしれない。半分は、現実の別の次元の話だ。条件は、対話で決める。数字の前に、まず価値観の一致を見る。

チームが増えても、意思決定のフラットさは守りたい。階層は、必要最小限でいい。

第十章 おふざけガチという姿勢

ここで、少し個人的な話をします。

おふざけガチ——ふざけているように見えて、本気で作る。本気で作っているように見えて、ときどきふざける。私たちは、そういう姿勢を大切にしている。

コーポレートサイトに、交通費補助12円と書く。プライバシーポリシーに、睡眠中の脳波と冷蔵庫の目視確認を書く。反社方針に、npm install のログ再生と五目並べを書く。笑える。笑わせに行っているわけではない。真剣な約束の周りに、余白を作っている。

余白がない文章は、信頼できないことがある。すべてが正しい言葉で埋まっているページは、どこかで嘘をついている気がする。私たちは、嘘をつきたくない。だから、一部をあえて壊す。

Brand Promise は、派手な言葉だ。「圧倒的な体験」。知らなかった感動。——大きく言いすぎたと、後から思う日もある。それでも、小さく言いすぎるより、まだマシだと今は考えている。

おふざけは、品質の敵ではない。油断の言い訳にもしない。境界線の上を、ロープ渡りのように歩く。落ちたら、ビルドを通してから立ち上がる。

第十一章 まだ見ぬ明日

Vision は、「今までにない新しいソリューション体験を届けること」です。

既存カテゴリの延長線上にある改善だけでは、vision とは呼びたくない。ユーザーが「こんなものがあるとは思わなかった」と感じる瞬間——その瞬間を、意図的に設計する。

音楽を、記憶として聴く。知識を、ファイルとして育てる。企業サイトですら、読み物として残る。——カテゴリの枠は、出発点にすぎない。

技術の変化は、速い。AI も、プラットフォームも、数年で景色が変わる。変わらないのは、問いの形だけだ。誰のためか。どこにデータがあるか。何を無料で届けるか。

まだ見ぬ明日を創造する——Overview の一文は、短い。短いからこそ、背後に長い説明が必要になる。この12章は、その説明の一部です。

未来は、予言できない。ロードマップは、週単位で書き換わる。それでも、方向は固定したい。深く、ローカルに、無料で、引き継げる体験を、世界に増やす。——規模ではなく、濃度で勝負する。

第十二章 あなたに届けたいこと

さて、長い話になった。ここまで読んだあなたに、結論だけを短く述べます。

Sarch.co は、個人向けソフトウェアの企画・開発・検証・マーケティングを行う、小さな自社開発会社です。Pocorom と Shiori を軸に、LFM Adder の基準でプロダクトを磨き、毎月、世に出すペースを守ります。

あなたがユーザーなら——使ってほしい。壊してほしい。違和感を、フィードバックとして送ってほしい。

あなたが仲間候補なら——エントリーシートを開いてほしい。長いが、私たちらしい。

あなたが競合なら——追いかけてほしい。私たちも、止まらない。

あなたがただの通りすがりなら——このページを閉じて、好きな音楽を一首、オフラインで聴いてほしい。それだけで、Pocorom の存在意義の半分は果たせる。

私は、まだ途中です。会社も、プロダクトも、文章も。完璧な代表メッセージなど、最初から存在しない。けれど、途中のものを、途中のまま見せる勇気は持ちたい。

最後に、繰り返します。

疑念を持ち、不合理を根本から解く。自分が心から満足できるプロダクトを、自分の手で作る。——それが、私たちのミッションです。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

これからも、どうかよろしくお願いいたします。

—— 以上、代表メッセージをもって、終わります。たぶん。 ——

CEO兼代表取締役

山下 翔大

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